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バットの木・アオダモ  フィールド&実験室・メニューに戻る

 北海道に広く拡がる落葉広葉樹林。伐採や風倒被害などにより,中小径木が多い二次林的林相の林分も多い。こんな森林でアオダモは育っている(写真・上)。

 本種は北海道から九州まで広く分布するが,広葉樹天然林がまだ多く残っているのはやはり北海道であり,もっとも主要な分布地であると言える。北海道でも,日本海側地方では分布は少なく,主要産地は胆振地方,日高地方である。

 アオダモと呼ばれている樹木の仲間には,マルバアオダモ(Fraxinus sieboldiana)とアオダモ(Fraxinus lanuginosa)の2種が知られている(大井次三郎著,日本植物誌)。図鑑によってはまた別の分類となっている場合もあり,難しいが,ここではそれらを総称してアオダモと呼んでいる。葉の形状や毛の状態などによる分類が,材質的な違いを持っているのか,バット素材としての形質の差となって現れているのかについては,未検討である。


 アオダモは5-7枚の小葉からなる羽状複葉の葉を持つ。雌雄異株,つまり雄花だけを咲かせるオスと雌花(すなわち種子)を着けるメスは別の個体となる。成熟したアオダモは,なめらかな樹皮に地衣類が付着して幹に独特の模様を描く(写真・下)。

 広葉樹林に他種と混交して育つが,アオダモは林冠の最上層を占めるような樹木ではなく,通常は中層に留まることが多い(写真・左)。大径木になることもない。したがって,一般用材としての利用には向かない。それだけに,アオダモは現在,専らバットの原料として,利用が特化した樹種となっている。


 一般用材としての利用がなかっただけに,これまでは造林対象樹種として取り上げられることもなかった。バット原木の供給は天然林に頼っているのが現状だ。小規模で試験的な植栽が数例あるだけで,育成方法,保育技術,などを体系化するほどの情報がない。かといっていつまでも,天然林からの資源供給に任せているわけにも行かない。バット原料の安定的確保のためには積極的な育林を考えてゆくことが重要である。

 成長や形質に影響を与える立地環境,地域差,個体差とその遺伝性などを探ることから始め,適正な形質を持った造林材料の抽出やその育成方法を工夫してゆく必要があるだろう。「バット」と言う目標がはっきりしているため,必要とされる形質も明確である。アオダモの成長特性を充分に理解できれば,必要条件を満たした上でより速く安全に育てるための具体的で独自な育林システムを構築できるのではないかと考えている。

 写真は採材を待つ直径20cm前後のアオダモ。この程度の太さ,枝や節,曲がりのない幹の形状などが当面育林の目標となる。この丸太を四つに割って,4本分のバット素材とする(写真・下)。天然林で育ったアオダモの成長はごくゆっくりで,この太さに育つまでに100年を超えていることも少なくない。 
 アオダモの資源を将来に渡って保証し持続的に確保するため,2000年には「アオダモ資源育成の会」が旗揚げした。野球関係者,行政,バット生産者らが一致協力することにより実現した画期的で大きな一歩である。2000年10月には同会の発足記念事業として,植樹祭が催された。私たちの研究室は同会に,調査・研究面で参加し,協力することになっている。他に,当研究科の「造林学分野」「木材工学分野」「森林施業計画学分野」,そして「北海道大学演習林」の参加による多面的,横断的研究を進めてゆく計画である。

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